あらすじ

「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」

竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。

ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。

夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。

竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。

離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。

三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。

怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。

そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。

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アルファポリス
アルファポリス2026/08/11
  • 現在の作品飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます