あらすじ
第24回ルビー小説大賞B評価を頂きました。
〈あらすじ〉絶海の孤島。水の医神エンディリアムを祀る医療神殿ルエンカーナ。島全体が白銀の建物の集合体《神殿》によって形作られ、彼らの不思議な力〈奇蹟〉と高度な医療技術による治療を願う者達が日々海を渡ってやって来る。
この島で白銀の髪と紺色の目を持って生まれた子供は、聖徒として神殿に召し上げられる。
青年エンティーもまた、生まれた時に神殿へと召し上げられ、成長を遂げΩであると判明した。
神殿には狭くも格差のある社会が形成され、病院の運営や島の政治を行う皇族と貴族層、そして彼らに仕え下働きをする平民層に分かれている。エンティーは平民層であり、数少ないΩだ。しかし貴族達にとっては皇族のαに近付く機会が減り、平民からしてみれば足を引っ張る存在。支給される抑制剤の強い効果に悩まされ、虐めや暴力を受けながらも、友人のβであるリュクや同年代の同僚に支えられ、エンティーはなんとか生きてきた。
そんなエンティーの小さな楽しみの一つが、皇族のαの青年シャングアとの会話だ。同情なく友として接してくれる彼の存在に、エンティーは支えられていた。
ある日、貴族の子供に虐められるエンティーを目撃したシャングアは、これ以上被害を受けない様に、皇族のαが複数のΩを囲う為の〈誓約〉を発動させる。エンティーは迷惑を掛けたくないと拒むが、彼は守る為に強行をする。
今まで見合いを断わり、逃げていたシャングアが誓約を発動させたとして、神殿は大きな騒ぎとなった。エンティーへの待遇が改善されていく中で、支給されていた抑制剤に禁止されている成分が検出された。精密検査の結果エンティーに薬物の中毒はなかったが、神殿内部に疑念が産まれる。
新たな生活に戸惑う中でも2人は支え合い、ある日シャングアの主導の下で神殿の警護をする飛竜の交代式が執り行われる。華やかな式は何事もなく終わるかと思われたが、突如上空から飛竜が落下し、暴走する。逃げ遅れたエンティーめがけて走る飛竜を何とか制するシャングアは、額にある奇蹟を制御する宝玉器官が割れてしまう。2人は危機一髪のところで救助され、シャングアは医師である兄から宝玉が割れた事でαの性が活性化すると注意を促される。
もう一人の兄である皇太子共に、飛竜の暴走させた犯人を探すシャングアだが、今まで無かったエンティーに対する欲求と、自分の中にある違和に悩まされる。同時に、彼を強く意識し始め、己の第二の性を理解し始めるエンティー。
少しずつ歩み寄り、互いの言葉と想いを伝え合い、2人は番となる。
幸福に包まれるはずが、2人の前に試練が訪れる。エンティーが何者かによって連れ去られてしまう。
禁止薬物を使用した抑制剤を生み出し、飛竜を暴走させた犯人による魔の手。シャングアが貴族のΩの見合いを逃げ続け、記憶が朧げになった理由。エンティーが禁止薬物に侵されず正常な意思でいられた答え。
全てが繋がり、絶海の孤島の白き神殿の深い闇が顔を覗かせる。