あらすじ

神器の格で、人の値打ちまで決まる帝国。神器の手入れは王都の認定工房だけに許され、低い格の者が自分の刃を直すことすら、身のほど知らずとされている。  辺境オルヌ村で暮らすレイフ・トーグは、包丁と鎌と鍬しか研がない、酒くさい老人だ。研げばまだ使える道具を、捨てさせたくない。ただそれだけを理由に、二十年、村外れの小屋で砥石を鳴らしてきた。  だが彼には、かつて王国中の剣を研ぎ上げた〈研聖〉という名があった。  若き日に極限まで研いだ一振りが暴走し、戦とは無関係の村を消した。以来レイフは、人を斬る刃には二度と砥石を当てないと誓っている。  そんな彼のもとへ、鉄の声を聞く少女ミナ、置き去りにされたと思い師を憎んできた騎士団長アルダ、研ぎを迷信と断じた宮廷技師ヨナス、折れた聖剣を抱えた若き勇者が、次々に現れる。  包丁が業物を断ち、石ころが結界をひらく――忘れられた手入れの技は、彼らが抱えてきた痛みまで暴いていく。  やがて北から、いかなる刃も通さぬ黒い鎧の軍勢が迫る。  守りたい、ありふれた村の暮らしのために。レイフは二十年前の誓いと、もう一度向き合うことになる。  これは、切れ味を追いすぎて人を傷つけた老いた職人が、砥石ひとつで世界と心を手入れしなおす物語。

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カクヨム
カクヨム2026/08/11
  • 現在の作品村外れの研ぎ師は包丁しか研がない