あらすじ
地球とは高次元で隣接する並行宇宙に、もう一つの“地球”が存在する。物理定数のわずかな違いから、その文明は地球よりおよそ9万年早く発展し、反物質推進、重力制御、月のテラフォーミングさえ実現していた。国家も戦争も遠い過去となり、人々は長い平和の中で暮らしている。
少年レイチェル・ソルジュは、友人のソレイユ・ランブルグ、ダリアン・ワッツとともにテラフォーミングされた月の巨大都市、シティーのアカデミーへやって来る。希少な青の人種であるレイチェルが選んだのは、6万年前の国家間戦争で使われていた古代戦闘機〈タクティカル・フライヤー〉を扱う操縦学部。最初のプレースメントテストで、レイチェルはエアバイクを操り、上級者クリフ・ミランと互角の勝負を演じる。だがそれは、アカデミーに隠された異変への入口にすぎなかった。
なぜ5万年以上も戦争のない世界に、戦闘機の操縦士を育成する学部が存在するのか。なぜ操縦学部だけは管轄する管理局すら公表されていないのか。疑問を抱いたソレイユは、アカデミーの歴史を研究するサクラ・ツミキと出会い、過去を調べ始める。
その頃、この世界を6万年にわたり観測してきた偏在意識レザムは、一人の少年をこの宇宙へ導いていた。
少年の名は、シンジ・ワタセ。
二つの宇宙、本来交わるはずのなかった文明、そして忘れ去られた戦闘技術。少年少女たちの出会いをきっかけに、長い平和の裏側で眠っていた因果が、静かに動き始める。