あらすじ
近未来、人間が重大な決断をした瞬間、脳内には「選ばなかった人生」の記憶がわずかに残ることが発見されている。
結婚しなかった相手と暮らした記憶。
乗らなかった列車の窓から見た景色。
救えなかった人と過ごした老後。
生まれなかった子どもの声。
それらを収集し、修復し、保存する施設が、通称――選ばなかった人生の博物館である。
主人公は、そこで失われた記憶を修復する三十八歳の女性、冬木澪。
ある日、澪は収蔵品の中から、自分を「お母さん」と呼ぶ少女の記憶を発見する。
しかし澪には、子どもを産んだ経験がない。
少女は、記憶の中から澪をまっすぐに見つめ、こう告げる。
「今度こそ、私を選ばないで」
この物語が最後まで問い続けるのは、次の一つです。
人は、選んだ人生だけでできているのか。