あらすじ
死んだ人間の部屋には、たいてい一つだけ、持ち主の知らないものがある。
王都遺品整理局に勤めるアレン・クロウは、剣も魔法も使えない「魔力ゼロ」の青年だ。
だが魔力を持たないからこそ、他人が物に残した微かな《残留魔力》を、自分の魔力に邪魔されず感じ取ることができる。
もっとも、分かるのは残留魔力の有無と濃さだけ。
誰が触れたのかも、いつ触れたのかも、そこに残された記憶も分からない。
だからアレンが見つけられるのは、答えではない。
死者の部屋に残された、小さな「矛盾」だけだった。
ある雨の朝。
魔力暴走によって亡くなった宮廷魔導師の遺品整理を依頼されたアレンは、机の上に残された遺書へ触れる。
本人が書いたとされるその遺書には、強大な魔力を持っていたはずの死者が触れた痕跡が、ほとんど残っていなかった。
偽物の遺書。
消えた研究記録。
そして、事故死として処理された宮廷魔導師の死。
「死んだ人は説明してくれません。だから、残した物を順番に見るんです」
これは、魔法では答えを出せない遺品整理官が、
死者の残した物から、生きている人間の嘘を一つずつ拾っていく物語。