あらすじ
山奥の貸別荘で、オンラインゲームの仲間たちによる凄惨な事件が起きた。
一人が死亡し、四人が重軽傷。
現場にいた三人が逮捕されたが、事件に至った理由について、彼らの証言は少しずつ食い違っていた。
ただ一つ、共通していた言葉がある。
――「さくらさんを守りたかった」
さくらさんは、同じゲームサークルに所属していた人物だった。
事件当日も貸別荘にいたが、争いが始まる前に一人だけ帰っている。
誰かを傷つけたわけでも、犯罪を命じたわけでもない。
それなのに、なぜ三人もの人間が、さくらさんのために殺し合うところまでいったのか。
フリーライターの桐谷隆二は、犯罪心理学を研究する友人・大西太陽から依頼を受け、事件を調べ始める。
逮捕された加藤高成。
傷害罪に問われた白川祐介。
事件の中心にいた三浦真紀子。
ただ一人軽傷だった相沢菜々。
そして、死亡した野々村智樹。
彼らの話を聞くほど、さくらさんという人物の輪郭は鮮明になっていく。
優しい人だった。
自分を理解してくれた。
救ってくれた。
自分だけは、特別だった。
だが、誰もが同じことを言う。
そして隆二もまた、いつしかまだ会ったこともない「さくらさん」のことを考えるようになっていた。
これは、一人の人間を巡って壊れていった人々と、彼らを狂わせた「さくらさん」の話。