あらすじ
古い町の片隅に、夕暮れから夜にかけてだけ扉を開く小さな店がある。
古書、ハーブ、天然石を扱うその店の名は――西の魔女商店。
店主・雨宮澪は、町の人々から「西の魔女」と呼ばれている。
けれど彼女自身は、一度も自分を魔女だと名乗ったことはない。
澪が使う占術は、紙に無数の点を打ち、その奇数と偶数から“大地の紋”を導き出す古い占術――ジオマンシー。
そこに現れる十六の図形には、それぞれ一柱の精霊が宿っている。
彼らが教えるのは未来ではない。
人が見失ったもの、閉じ込めたもの、手放すべきもの、そして今どちらへ歩こうとしているのか。
夫が突然姿を消した女性。
忘れられない恋に囚われた人。
遺品に残された言葉を探す家族。
故郷へ帰れなくなった男。
誰かを許せずにいる女。
答えを求めて店を訪れる十六人の客に、十六の紋が現れる。
しかし澪は、決して答えを与えない。
「私は地図を広げるだけです。歩くのは、あなたですから」
一つの紋が、一人の人生を照らすたび、相談者たちはそれぞれの答えを胸に店を出ていく。
そして十六の物語が重なるにつれ、少しずつ明らかになっていくもう一つの謎。
なぜ雨宮澪だけが、十六柱の精霊を見ることができるのか。
西の魔女商店とは、本当は何のために存在する場所なのか。
十六番目の紋が現れた夜、澪自身が長い間閉ざしていた過去にも、ついに一枚の地図が開かれる。