あらすじ
「この山を超えた先に、私のすべてを棄てに行く──」
帝国貴族アストラヴァール侯爵家の令嬢・メリアは、戦地で命を落とした兄の遺灰を聖地へ納めるため、たった一人で白銀の山脈の彼方を目指して旅立つ。
……というのは表向きの話。
不純な動機を胸に隠して北を目指すメリアだったが、エルフ自治領の検問所で人間嫌いの衛兵に捕まり、早々に足止めを食らってしまう。
絶体絶命の彼女を救ったのは、素性の知れない胡散臭い男・ジルだった。偽の夫婦を演じて窮地を脱した彼は、その恩を盾に、旅の報酬としてメリアが持つ亡き母の形見の銀のロケットを要求。旅の終わりにそれを引き渡すことを条件に、強引に道案内役としてついてくることになってしまう。
しかしこのジルという男、飄々としていて掴みどころがない上、何から何まで一筋縄ではいかない。もちろん、メリアも彼には明かせない本当の目的を隠したままで──。
お互いに秘密を抱え、おまけにとことん相性が悪い二人。メリアの不純な巡礼路と、ジルのろくでもない辺境道案内。嘘と道草だらけの不本意な二人旅が今始まる。