あらすじ

――最もペーパーで、最もリーガルで、そして最もフェティッシュなやり方で、いかせていただきます。 かつて地面師たちの金主だった老人・篁一臣は、昼のワイドショーに流れた一枚の字幕を見て、新しい商売を思いつく。 「芸人S被告側、示談金2500万円を提示か 被害者側は拒否」 ――たったいま、テレビが全国に向けて、相場を公示した。男の残りの人生の、買い戻し価格を。 脅し文句は一つも要らない。弁護士名の丁寧な通知を一通送るだけで、受け取った男の頭の中では、逮捕と実名報道とスポンサー離れが勝手に上映される。上映しているのは我々ではない。この国の制度と報道だ――。 元金融庁キャリアの帳簿係。歌舞伎町で二十年「後始末」を続けてきた手配師。本物の書類に嘘の物語を運ばせる元保険調査員の設計士。そして、三年前に本物の被害を「嫌疑不十分」の五文字で棚上げされた、二十六歳の女。 座組みは完璧だった。標的のユーチューバーは静かに二千二百万円を払い、守秘条項の底に沈んだ。だが二件目の標的は、払わなかった。受任通知を持って、自分の足で警察に行った男は、十二日後、逮捕された――。 法律と報道と世間、三枚の板の隙間に店を出した詐欺集団と、その座組みを内側から壊した一枚の古い紙の物語。 ※本作はフィクションです。実在の人物・団体・係属中の事件とは一切関係ありません。犯罪の手口を推奨するものではなく、また、性被害の訴えを疑うべきだという主張のための物語でもありません。

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カクヨム
カクヨム2026/08/11
  • 現在の作品示談師たち ― 不同意性交等罪の相場 ―