あらすじ
「君との婚約は解消する」
「レグルスは?」
「明朝、処分する」
婚約を切られたその日、私が育ててきた馬も捨てられた。
レグルス。
実家のローデン牧場で生まれ、生まれた日から見てきた牝馬。
出足が遅い。馬群を怖がる。鞭を嫌う。
元婚約者ゲオルクは、自分の勝ち方に合わないその馬を切り、二度の御前競馬を勝った名馬アルタイルと、その馬を生んだ牧場の娘を選んだ。
買い戻す金はない。
その夜、私は年内に妻を迎えなければ家督を失う公爵を訪ねた。
「一年だけ、妻になります」
「君の条件は?」
「レグルスを買ってください」
こうして始まった、一年間の白い結婚。
飼い葉も蹄鉄も御前競馬の登録料も、馬医として自分で稼ぐ。
そして気づく。
この馬は弱いのではない。
ほかの馬と同じ走り方を、強いられていただけだ。
なら、私が乗る。
最後方から、大外へ。
「ずいぶん勝ちから遠い場所を選ぶんだな」
そう笑った男の馬を、私たちは追いかける。
勝てないものを切ってきた男が、次は自分が切られる側になることを、まだ本人だけが知らない。
白い結婚から始まる、捨てられた牝馬と令嬢の逆転恋愛譚。
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