あらすじ
平成最後の冬。大学入試センター試験が終わり、学校で一斉に自己採点が行われた。
弟の翔太は270点だった。もっとも、その点数が進学に影響するわけではない。翔太は数か月前、すでにAO入試で雪森県内の私立大学への進学を決めていたからだ。
それでも結果が出るなり、翔太は真っ先に親族のLINEグループへ点数を投稿した。叔母は「翔太は将来有望だ」と褒め、叔父は「これで木原家からも大学生が出るな」と喜び、祖母まで拍手のスタンプを何個も連続で送っていた。
私はしばらくそのやり取りを眺めたあと、自分の点数も送った。
782点。
それまで賑やかだったグループが、十数分間ぴたりと静まり返った。
最初に口を開いた叔母は、「女の子がそんなに勉強して何になるの」と言った。叔父は「翔太の点がよくないと分かっているのに、わざわざ高得点を見せるなんて姉として思いやりがない」と続けた。
祖母はもっと露骨だった。
「どうせ嫁に行くんだから、そんなにいい点を取ってどうするの。翔太に恥をかかせたいのかい?」
スマホの画面を見つめながら、私は思わず笑った。
木原家では、270点なら家の誇り。
782点を取った私は、身の程をわきまえない娘らしい。