あらすじ

「――練習相手に、なってくれない?」  全国大会を狙う演劇部の看板役者・汐見詠から、告白場面の稽古を頼まれた。  俺は放送部の音響係だ。声を出す側じゃない。録る側の人間である。  渡されたのは、十編入りの『告白練習ノート』。  海辺。保健室。駅のホーム。雨の昇降口――  場所も、時刻も、演じる感情も、一編ずつ違う。  違わないのは、〈相手役〉の欄だけだった。  一編目、高瀬律。  二編目、高瀬律。  ……読めるページは、全部、俺の名前。  十編目だけ、輪ゴムで留めてある。 「キミがね、一番演技しやすいんだ」  彼女はそう言って笑う。  じゃあ、どうして稽古の途中で、台本にない台詞が混ざる?  どうして彼女は、三年前に俺が言った一言を、俺の言い方のまま返してくる?  演出の先輩が決めた稽古の則は、五つ。  ――一編一回。撮り直しはしない。  ――切ったら、稽古場の外へ持ち出さない。  嘘の告白を重ねるほど、本音が一段ずつ近づいてくる。  甘くて、痛くて、逃げ場のないリハーサルが始まる。

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カクヨム
カクヨム2026/08/11
  • 現在の作品告白練習ノートの「相手役」が、なぜか全部俺です ~九回は台本どおり。十回目だけ、台本がない~