あらすじ
噛みたい沙耶と、噛まれたくない悠人。
恋愛、食欲、感染者制度、宅配便で届く人間の肉。
そして「噛まれる本人の同意」をめぐる、少しおかしくて、まともに考えるとかなり怖いコメディホラー。
ゾンビになれば、花粉症は治る。ダイエットも楽になる。少しくらい身体が壊れても、修理すれば働き続けられる。
それでも悠人は、ゾンビになりたくなかった。
感染者が登録証を持ち、定期検査を受け、人間を襲わないよう代替肉で空腹を管理する社会。ゾンビはもはや怪物ではなく、制度に従って暮らす隣人になっていた。
悠人の恋人・沙耶も、その一人だ。見た目は人間とほとんど変わらず、優しく、きれいで、ときどき悠人を食べたそうに見る。
そんな二人の前に現れたのは、持ち主から切り離された一本の右手だった。
その手は、ただの遺体の一部なのか。それとも、本人の欲や記憶を残しているのか。右手をめぐる出来事を追ううちに、悠人は、人間とゾンビを分けているものが肉体だけではないことを知っていく。
好きな人と同じものになりたい。けれど、自分ではなくなりたくない。
噛むことは愛なのか。愛しているなら、噛ませるべきなのか。
そして悠人は、自分が人間でいる理由を選ぶことになる。