あらすじ
街のどこかに、探しても見つからない小さな店がある。
その名は――「忘れもの預かり所」。
本当に何かを失くした人だけが、その店へたどり着く。
けれど、そこで預かっているのは財布や鍵ではない。
忘れてしまった大切な人の声。
幼い日に交わした約束。
思い出せなくなった誰かの笑顔。
諦めた夢。
伝えられなかった言葉。
人生のどこかで置いてきてしまった「忘れもの」。
店を訪れた客に、店主は静かに問いかける。
「今日は、何をお探しですか?」
そして、忘れものを返す前に、もう一つだけ尋ねる。
「本当に、思い出してもよろしいですか?」
忘れることには、理由がある。
忘れものを取り戻すことが、必ずしも幸せにつながるとは限らない。
それでも人は、ときに失くしたものを探さずにはいられない。
一話につき、一人の客と、一つの忘れもの。
少し不思議で、ときに切ない、一話完結の連作短編。
そして、多くの忘れものを見届ける店主にもまた――
まだ思い出せない「忘れもの」がある。