あらすじ

六人ぶんの「幸せ」は、同じ筆で、あとから書かれている。 大正の末。山が鳴りはじめると、七久里村は御名山へ花嫁を送る。 十七のあさに渡されたのは、『七久里花嫁帳』と呼ばれる冊子だった。 輿入れまでの七日間、一日にひとりぶん。これまでに嫁いだ六人の花嫁の記録を読むことを、花嫁だけが許される。 月の花嫁は、ひとことも問わなかった。だからよき花嫁だった。 火の花嫁は、神を怒らせ、社ごと焼かれた。 水の花嫁は、村を救うため、みづから沈んだ。 ――どの頁の末尾にも、同じ一行が書き足されている。「幸せであつた」と。 太い筆で。濃い墨で。五人ぶん、まとめて。 墓石だけが消えた初代。焼かれた墓石。真新しい堰。温かい御神木。 余白に残された、消し忘れの走り書き。 そして白紙のまま綴じられた六人目の頁は、三年前に山から帰り、それきり口をきかない姉のものだった。 七日目。あさは自分の頁に、たった一行を書く。 「わたくしは、なをききます」 大正末を舞台にした和風あやかし。全十四話、完結まで書き上げ済み。

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小説を読もう2026/08/10
  • 現在の作品七曜の花嫁 ~嫁いだ六人は、すべて幸せであつた~