あらすじ
伯爵令嬢ミレイユ・ベルフォールは、十五歳から葬送師として死者の身体を整えてきた。
けれど貴族社会では、死者に触れる仕事は忌み嫌われている。
かつての婚約者からも、
「母の身体に触れたその手で、私に触れるな」
と拒絶され、家族からさえ都合よく利用されてきた。
そんなある日、王太子妃となるはずだった令嬢セシリアが、婚礼前夜に突然亡くなる。
葬送のため遺体を整えていたミレイユは、左耳の後ろに不自然な傷を発見する。
それは五年前、婚礼直前に事故死した公爵令嬢アリーナの身体にも残されていたものだった。
さらにミレイユの道具箱から毒の小瓶が見つかり、彼女自身が殺人の容疑者にされてしまう。
そんなミレイユを犯人と決めつけず、事実を確かめようとしたのが、アリーナの兄――冷酷と恐れられるグレイヴァルト公爵カイウスだった。
「君を信用したとは言わない。だが、犯人だとも決めない。事実を確かめる。それだけだ」
死者に触れる自分の手を、初めて否定しなかった人。
カイウスとともに五年前の死を調べるうち、ミレイユは婚礼を目前に亡くなった令嬢たちの存在へ辿り着いていく。
なぜ、花嫁ばかりが死ぬのか。
なぜ、ミレイユは犯人に仕立てられたのか。
そして事件を追うなかで、誰かに決められるまま生きてきたミレイユは、自分の仕事も、人生も、愛する人も、自ら選び始める。
死者を美しく送り出す葬送師令嬢と、彼女の手を決して拒まない冷酷公爵。
これは、死者に触れる手を嫌われた令嬢が、自分の人生と愛する人との未来を取り戻す物語。