あらすじ
「乾杯。あなたたちの結婚に、ね」
婚約披露の夜会。薔薇の花びらが敷き詰められた大理石の階段の頂上で、悪役令嬢アリエルは毒杯を掲げて笑った。王太子に婚約を破棄され、継妹の『聖女』に無実の罪を着せられ、断罪される――そんな筋書きなど、知ったことか。
自らの意思で毒を呷ったその瞬間、彼女の脳裏に別の人生が流れ込む。前世は過労死した元社畜・河野杏里、二十九歳。『定時で上がります』が口癖だったのに、一度も上がれなかった女。
気がつけば、五年前――継妹ミレイユが家にやってきた、あの日に死に戻っていた。
この先の全てを知っている。毒も、詐術も、裏切りも。ならば今度は黙って使い潰されない。社畜が身につけた証拠収集、根回し、そして現代の薬学知識を武器に、アリエルは反撃の準備を始める。
「証拠を、残せばいい」
そして深夜の大階段で出会ったのは、花びらを拾い集める『氷の将軍』オズヴァルト。冷酷無比と噂される第二王子の、意外な素顔――。
散らされる花で終わるのはもうやめた。今度は私が、階段を『上る』番だ。
元社畜令嬢の痛快逆転劇。しかし断罪の夜、彼女はある“見覚えのある色”に気づいてしまう。この世界に還ってきたのは、本当に私だけなのか――?