あらすじ
駅前の大病院でも、最先端のクリニックでもない。古びた自動ドアと、飴色に光る受付カウンターだけの、街の小さな病院。
ここに集まるのは、大きな病気を抱えた人だけじゃない。仕送りのために薬を半分に割る老婦人。頑固すぎて誰にも本音を話さない職人。娘との距離を測りかねている母親。誰もが少しずつ、言葉にできない事情を抱えて自動ドアをくぐる。
受付の文恵、看護師の看坂、調理師の食野、そして薬剤師の薬谷。特別な力は、誰も持っていない。ただ、目の前の人をちゃんと見る。それだけを、この病院はずっと続けてきた。
変わらない日常を守るということは、案外、こんなにも尊い。