あらすじ
「穴を塞げば同じだ、稼ぐのは俺だぞ」——鋳掛け屋の親方はそう言って、鞴の柄を二度で止めます。赤みの足りない継ぎ金でも、槌で叩けば穴は塞がって見えるのでございます。
朝だけ火にかかる鍋と、一日じゅう下ろさない鍋では、要る厚みが違います。わたくしは四年、その家の火の入り方を見て厚みを決めてまいりました。継ぎ金の枚数を数えていたのは、親方のほうでございます。
出て行けと言われても、わたくしからは申しません。代わりに得意先を回り、「これからは親方が継がれますので」とご挨拶して、誰の手で継いだ鍋かだけ、一枚の紙へ爪印で頂きました。
寄合で親方がご自分の口で仰った晩、その紙を膝の前へ置きました。戻ってきた鍋の底には、使われた月の数がきちんと残っております。