あらすじ
亡くなった祖父の押し入れの奥から見つかった、一箱の古びた桐箱。
そこには、菊の御紋が刻まれた銀の懐中時計と、軍からの「感状」、そして手彫りの将棋盤が大切に隠されていた。
祖父はなぜ、戦場での誉れを生涯語らず、家族に隠し続けていたのか――?
遺品の手帳を紐解いた孫の淳也が目にしたのは、昭和十四年、激戦のノモンハンで「傷痍軍人」となった祖父・正造の過酷な記憶だった。
猛暑と泥に塗れた地獄の戦場。命を分け合った分隊の仲間たち。
そして、足を負傷して早々に生還してしまったことで、生涯正造を苛み続けた「自分だけが生き残ってしまった」という痛切な葛藤。
戦後の北海道で、傷を抱えた元兵士たちとその妻が集う「傷痍軍人会」の温かい絆。
祖父が遺した記憶のバトンは、やがて時代を超え、現代を生きる孫へと静かに受け継がれていく。
実書や遺品、史実の資料に基づき描かれる、生き残った者の葛藤と、命を繋いだ家族の愛の物語。