あらすじ
「君は効率が悪い」——新年の客をお迎えする朝、婚約者はわたくしの手から鈴を取り上げ、義妹に持たせました。
七年、この屋敷の朝の手配を決めてまいりました。厨は厩より四半刻早く起こさないと、湯が沸く前に馬が出ます。薬湯を待つ老公は、人の足音が絶えてから。いがみ合う侍女二人は、同じ廊下で行き合わせない。雨の朝は洗濯を後ろへ回して厨を先に。
書き出せるのは順番の結果だけで、理由は全部わたくしの頭の中にございます。
鳴らす順は「早い順」に決め直され、わたくしの分はどこにも置かれず、婚約は破棄されました。左様でございます。効率でございますね。ですからわたくしの手配は、この屋敷には要りませんわね。
鈴を卓のいつもの位置へ、磨いてから置いてまいりました。持ち出すものはひとつもございません。
三月の朝、書き出された手順どおりに鈴が鳴らされます。湯が沸く前に馬が出、侍女二人が廊下で行き合い、老公は誰にも起こされません。誰も声を荒げません。ただ次の月から、訪問のお返事が来なくなります。
大叔母の口利きで領地と近隣の朝を任され、初めて自分の名で鈴を鳴らしたわたくしの門前へ「戻ってくれ」と立った婚約者へ、あの一句をそのままお返しするお話。