あらすじ
「お願いです。私を……終わらせてください」
明日になれば、あの人が「行くな」と私を止めてしまうから。
私は彼が間に合わない夜に、自ら勇者の前に立った——。
「その女を篭絡し、死を受け入れさせろ」
異世界から「王女の身代わり(贄)」として召喚された私。
私を殺すための武器を作るため、世界の調律のため、私は死ななければならない。
私の世話役となった男は、王命に従い、完璧な優しさで私を騙し始めた。
義務としての世話。計算された笑顔。
全部知っていた。騙されたフリをしていた。
——それなのに、私は彼を本気で好きになってしまった。
そして彼もまた、私を「本当の愛」で満たしてしまった。
決行日の前夜。
明日になれば、彼が気づいてしまう。
私の手を掴み、「生きてくれ」と泣いて止めてしまう。
そうされたら、私は世界よりも彼を選んで生きたくなってしまうから。
だから私は今夜、彼が間に合わない暗闇の中で、勇者に剣を預ける。
一度もあなたの名前を呼べなかったのは、名前を呼んだら逃げ出したくなってしまうから——。