あらすじ
本日の侵入者――ゼロ。
昨日もゼロ。先月もゼロ。
俺はダンジョンである。
正式名称は《奈落の千層迷宮》。最深部まで千階層、魔物三万種、
かつては「世界最後の迷宮」とまで呼ばれた大迷宮だ。
……百年前までは。
調べたら原因はすぐ分かった。部下が張り切りすぎて、
第一階層にオーガ二十体と千本毒針廊下を設置していた。
だが難易度は下げない。ダンジョンとしての沽券に関わる。
ならば話は簡単だ。
「冒険者を強くすればいい」
こうして俺は入口に酒場を生やし、店主となった。
飯を出し、装備を渡し、情報を渡し、傷を治して、また送り出す。
記念すべき最初の客は、所持金・銅貨二枚。
昨日パーティーを追い出されたばかりの、あらゆる能力値が最低の新人だった。
ただ一つ、《迷宮適応率》を除いて――測定不能。
攻略者は、自分で育てる。
千年待ちくたびれた大迷宮の、自給自足型ダンジョン経営がはじまる。