あらすじ
不同意性交をめぐる冤罪をなくすため、セックスをリアルタイムで暗号化し、そのままネットに生配信する。
ただし、配信されるのは誰にも読めない暗号文だけ。映像そのものを他人が覗くことはできない。それでも暗号文を撮影と同時に複数のサーバーへ送り続けておけば、「この映像に対応するデータは、その時刻にすでに存在していた」という証拠をネット上に残せる。
しかも、撮影した本人にさえ勝手に復号することはできない。
大学生・相良慎吾は、性的同意をめぐって友人の人生が壊れていくのを見て、そんなシステムを思いつく。
名付けて――セミライブセックス。
「男ってバカだよな。女と交尾しなけりゃ食われないのに」
慎吾にとってセックスとは、男が女に生殺与奪の権を預ける行為だった。だから彼が作りたかったのは、最初は「男が食われないため」の仕組みだった。
だがセミライブは、慎吾の思惑を超えていく。
女性が途中で「やめて」と言った証拠も残す。やがてNPO法人へ成長し、復号の可否を独立して判断する「復号所」まで生まれる。そして社会へ普及した結果、今度は「セミライブを使わなかった人間が疑われる」という新しい問題まで生み始める。
一つの技術は、人間をどこまで守れるのか。
そして、人間は証拠がなければ互いを信じられないのか。
これは、一つの架空の発明と、それを作った男女の物語。
そしていつか、本当にこんな仕組みが現実になるかもしれない――そんな未来についての空想科学小説。