あらすじ
石川県金沢市。幸福に見えた二つの家族の日常に、誰にも気づかれない不協和音が混じり始めていた。
格式高い「東山」に住む長谷川家と、モダンな「太陽が丘」に住む神谷家。娘同士が親友であることをきっかけに、二つの家族は理想的な交流を続けていた。
すべては、幸福の象徴だったひとつの鍋を囲む、穏やかな夕食から始まった。
だが、完璧に調律されていたはずの平穏に、いつしか微かな不協和音が混じり始める。
正論を積み重ね、家族を守ろうとする父。
「完璧な妻」という役割に窒息しかけていた母。
そして、その変化を何も語らず、ただ静かに見つめ続ける建築士・恒一。
誰一人として「悪人」はいない。
皆、自分なりの正しさを補強するために砂を積み上げ、その結果として、自らを閉じ込める「檻」を築いていく。
金沢の静かな雨が降り続く町で、誰にも気付かれないまま家族は少しずつ壊れていく。
人は、誰の「正しさ」に救われ、誰の「正しさ」に壊されるのか。
積み上げられた「砂の上の楼閣」は、音もなく崩れ落ちる。
その瓦礫の中で笑っているのは、家族か、それとも誰か。
家族という最も身近な場所で始まる心理サスペンス。