あらすじ
「罪人の娘に、家督は継がせられない」
卒業式の日に届いた、父の訃報。辺境の守りを担う武人の家、グラフォレス子爵家の跡取り娘エレオノーラは、身に覚えのない罪状ひとつで、名も居場所も奪われた。
四年後。彼女はレオナと名乗り、隊商の後ろを守るだけの一介の冒険者になっていた。
護衛の道中、襲ってきた盗賊の首領は、人の皮を被った魔族だった。赤い瞳に射抜かれ、指一本動かせぬまま斧を振りかぶられる――その刹那、旋風のような剣が魔族の首を刎ねた。
「エレオノーラ嬢か。立派になったな」
十二の年に、剣も魔法も学問も授けてくれた二十三歳上の家庭教師。七年ぶりに現れたロイ・ヴランドは、単身で魔族を狩る者だけが名乗れる辺境最強の称号――魔狩人(まかりゅうど)をもつ魔法剣士であった。
泥にまみれた自分を、先生は立派な冒険者だと言った。そして昔と同じ手つきで、ぽん、と頭を叩いた。
「決して足手纏いにはなりません。どうか、一緒に連れて行ってください」
家名は奪われた。それでも、辺境を護るという本分だけは血に残っている。
多くを語らない元家庭教師と、その隣に並び立つと誓った令嬢戦士。二人の旅路が、やがて辺境を侵す魔族の企みへと繋がっていく。