あらすじ
私がこの記録を残そうと思うのは私のためにではない。
起きてしまった事件とその顛末については、警察に詳細な記録が残っているだろう。
犯罪の経緯とその動機、そして、それに人々がどう関わったのかについても。
しかし。
事件を通じて変わってしまった人の心については警察の関与する所ではない。
だからこそ、それを残すことこそが謎を解いた探偵に与えられた使命なのだと思う。
どうやら私に残された時間はあと僅からしい。
天命と云うものがあるとすれば、全てを残すに足りる時間があるのかも知れない。しかし。
残される記録は、いつの日にか、誰かに読まれる事を前提としている。
であるならば、私が記すべき事柄は愛する二人についてになるはずだ。
私と彼らがどう生きてきたのか。
事件に関わる事でどう変わってきたのか。
それこそが残されなければならないのだろう。
願わくば、この記録が私の愛する二人、松崎君と美尾君のためになる事を。
水上典之