あらすじ
知略王が、殺された。
それは、この国では「あり得ない」はずの事件だった。
情報を集め、比べ、結び付けることに秀でた知略圏。
人々は何百年もの失敗を記録し、同じ過ちを繰り返さないための仕組みを築いてきた。
王の暗殺記録を整理することになった一人の記録官は、犯人にまつわる奇妙な事実に気付く。
情報はあった。
誰かが隠していたわけでもない。
担当者たちは、それぞれ正しく処理していた。
それなのに――誰も、その意味を見つけられなかった。
やがて彼は、同じような「見落とし」が各地で増えていることを知る。
武力、知略、信仰、商業。
異なる価値観を積み重ね、それぞれ異なる《法則》のもとで発展してきた世界。
王の死をきっかけに記録を追い始めた男は、やがて自分たちが「当たり前」と呼んできたものそのものに疑問を抱き始める。
誰かが間違えたのなら、正せばいい。
だが、誰も間違っていないのだとしたら?
これは、敵を倒して世界を救う物語ではない。
誰も傷つけずに、壊れ始めた世界への答えを探す物語。