あらすじ
「毒を盛られても、死なない令嬢がいる」
社交界でそう囁かれる子爵令嬢イリス・ラングレーは、生まれつき毒への耐性を持っていた。気味悪がられ、婚約者にも逃げられた彼女に唯一舞い込んだ仕事は、王宮の毒見役――誰もやりたがらない、命がけの底辺職だった。
けれど、イリスにとってそれは天職だった。幼い頃から独学で極めた毒物と薬草の知識で、盛られた毒の種類はおろか、仕込まれた量、そして仕込んだ者の意図まで見抜いてしまう。
「今日の毒は、殺すためではなく――脅すためのものですね」
陛下の食事に紛れ込んだ違和感に気づいたイリスは、静かに宮廷の闇へと足を踏み入れていく。誰にも期待されなかった毒見役が、いつしか国の中枢で頼られる存在になるまでの物語。