あらすじ
蛇口をひねれば、水が出る。
そんな当たり前のことを、佐伯はこれまで深く考えたことがなかった。
四月一日。
地方自治体で働く佐伯は、道路管理課から水道課へ異動することになった。
役所勤めは十一年目。
会計課、総務課、道路管理課を経験し、公務員の仕事には慣れている。
けれど、水道の仕事はほとんど分からない。
そんな異動初日、水道課に一本の電話が入る。
「道路から水が出てるんです」
漏水修理の手配、給水装置工事の申請、濁水や断水への対応、指定工事店とのやり取り。
そして、次々とかかっていく修繕費。
漏れたなら直せばいい。
最初はそう思っていた。
けれど、修理するにも金がかかる。
古くなった水道管は一本ではない。
予算には限りがあり、その財源には利用者が支払う水道料金がある。
それでも、水は今日も止められない。
四月から翌年三月まで。
小さな自治体の水道課で働く佐伯と、蛇口の向こう側にある仕事を描く一年間のお仕事小説。