あらすじ
「南はもう赤みが痩せております」——瓦を焼く窯の前で四年、そう申し上げるたびに返ってきたのは同じひと言でした。「冗談だ。本気にするな」。
窯の南は風下でございます。半刻早く薪を足さなければ、土が焼け切らずに色が飛ぶ。わたくしは毎晩起きて、火を足してまいりました。焼き損じが出た夜には、その一枚を土蔵へ積みました。四年ぶん、静かに積み上がっております。
薪を一割減らせと言われた月、わたくしは頼まれた土の数だけ量り、火を見るのをやめました。窯から出した朝は、たしかに揃って見えたのです。
葺いた屋根が雨を二度受けたころ、普請を決める寄合へ、色の飛んだ瓦を一枚だけ持って参りました。——では、これから申しますことも、どうか本気になさいませんよう。