あらすじ
「今日かぎりで暇をやる。この店を出たら、お前に帰るところはないと思え」——六年勤めた箒屋を、風呂敷ひとつで追い出されました。
棕櫚は湿らせて締めなければ、乾いてから逃げます。逃げた穂は三月で腰を失う。乾いたまま束ねても、買った日は同じ顔をしておりますのに。
同じ日に暇を出された六十七の老爺とふたり、水場も遠い裏店の四畳半で、最初の一本を締めました。銭入れと、箒を締めろという一言のほかは何もございません。
三月後、土間に残る掃き筋の違いに、掃く側が先に気づきました。同じ値で腰の残る箒がどこから出ているのか、町は静かに買う先を変えます。空いた締め場に、水を通す手はもうございません。柄の尻へ自分の名を焼いたわたくしの土間へ「戻れ」と立った主人へ、宣告の一句をそのままお返しするお話。