あらすじ
「あれ、俺じゃないのか?」
辺境の男爵家の息子、アルバ・レンは、生誕祭で上演された勇者劇を見て、思わずそう呟いた。
劇に登場したのは、世界を救った大魔法使いにして勇者である『シエロ』と、魔神王を陰から操り、最後には勇者を裏切った極悪非道の黒き剣士。
その剣士のモデルこそ、前世のアルバだった。
だが、その物語は間違っていた。
アルバの前世は、千年前に最強を求めて戦い続けた剣士だった。
そして勇者シエルは、彼が生涯ただ一人、互角と認めた好敵手である。
二人は仲間とともに魔神王を倒し、すべてが終わったあと、約束していた決着をつけるために戦った。
しかし千年後の世界では、シエルは剣を使わず、魔法だけで世界を救った「勇者シエロ」として崇められ、アルバの前世は勇者を裏切った悪人へと書き換えられていた。
そのうえ、勇者を崇拝する勇者教の教えによって、魔法こそが至高とされ、剣術は野蛮な技として蔑まれている。
「俺たちの戦いを、勝手な物語で汚すな」
アルバは、歪められた歴史を正すことを決意する。
幸い、前世で極めた剣技は、幼い身体にも受け継がれていた。
舞い落ちる葉を一振りで無数に切り刻み、魔物さえ容易に斬り伏せるその腕には、並の戦士では到底及ばない。
一方、今世のアルバが持つ魔力は、周囲から「劣等薄魔」と嘲られるほどわずかなものだった。
だが、魔力が少ないなら、一滴も無駄にしなければいい。
前世の技術と経験を応用し、魔力を指先へ凝縮して弾丸のように撃ち出し、剣へまとわせて威力を高める。
アルバは、剣技と魔法を融合させた独自の戦い方を作り上げていく。
やがて彼は、魔力量が人の価値すら左右する王都の魔法学園へ向かうことになる。
剣を見下す魔法使いたち。
偽物の勇者伝説を信じる者たち。
そして、千年後の世界に生きる未知の強者たち。
「もう一度、最強になればいい。そうすれば、俺の言葉を無視できる者はいなくなる」
これは、歴史の中で悪人にされた最強の剣士が、わずかな魔力と極め抜いた剣技で再び頂点を目指し、好敵手とともに戦った真実を取り戻す物語。