あらすじ
「紙を張れば同じだ、稼がぬ者は口を出すな」——提灯屋の親方がそう言った朝、干し場のひごは四十本しかございませんでした。頼まれた提灯は十張り。川風を越すなら、骨は一張りに八本要ります。
わたくしは言い返しませんでした。ただ、頼まれた数だけを渡すことにいたしました。四本と言われれば四本。夜のうちに割り足す仕事は、本日より休業でございます。
家を出るとは申しません。代わりに得意先を一軒ずつ回り、「これからは親方がお張りになります」とご挨拶して、誰の手を望むかだけ、一枚の紙へ爪印で残していただきました。
寄合の晩、親方はご自分の口で仰いました。「この嫁は要らぬ、出て行かせる」。——ではこちらを。爪印の並んだ紙を座の中央へ置いたお話です。四本の提灯は、その夜の川風で残らず潰れました。