あらすじ
狩人の少女テレサ、十二歳。
役場のトーマと行商人シリルの口論を目撃してしまったテレサは、追いかけられて逃げた先で地震に遭い、猟犬のクロエを残して地割れの底へ落ちる。
目を覚ましたのは、古代文明の地下施設。知らない天井だった。
「……ここ、どこや」
口を突いて出た自分の言葉に、自分で眉をひそめる。
――関西弁?
流れ込んできたのは、満員電車。サーバールーム。障害報告。徹夜。デスマーチ。缶コーヒー。そして、心臓を締め付ける痛みで終わる四十年ぶんの記憶。
四十代のおっさんでシステムエンジニアだった自分も、十二歳の狩人である自分も、どちらも自分だった。
「統合……?」
まず確認。状況整理。ログ取得。現状把握。
落ち着きを取り戻したテレサの前に、宙に浮かぶ喋るどくろが現れる。
『個体識別名』
『DKR-01』
「覚えられへん」
『短縮名称ヲ推奨』
『どくろん』
「……もしかして、あほ?」
『私ハ、可愛イ』
三日ぶりに村へ帰ると、トーマは死んでいた。
地震による事故だと、誰もが言う。
けれど……
狩人の目と、前世の理屈と、ポンコツどくろの壁打ち。
材料が揃ったとき、テレサは必ずこう言う。
「完璧に理解した」
――そして、だいたい間違っている。
少女と、どくろと、猟犬の、異世界ポンコツ事件簿。