あらすじ
とこしえの夕暮れに覆われた、曇天の文明崩壊都市。
そんな終末世界をケータリング車で転がしながら、温かな食事をふるまう奇妙な男(……と、その連れ合いのポンコツアンドロイド)がいる。
かつて栄華を極めた”水の星”の上に置かれた都市たちは、オーバーテクノロジーの積み重ねと『第四次終末大戦』により、壊れてしまった。
滅びゆくこの星になお住み着いているのは、別の星への移住が叶わなかったわけありの人類や半恒久的に生き続けるオートマタやロイドの類と、この過酷な環境に適応した特異生命体くらいのもの。
ゆるやかに夜へ向かうこの星に残されたのは、いずれ来る滅亡だけだ。
凸凹のはぐれ者ふたりは今日、どこで、誰に、どんな食事をふるまうのか。
いまさら何も救えない、けれど、そんな絶望をちょっと掬って口に入れてみれば。
そこには必ず、どこかあたたかな滋味がある。
幾年も昔に失われたはずの、「いただきます」が。
腹が減っては戦はできない。
戦がなくとも、街がなくとも。生きているなら腹が減る。
だから今日も、こんな世界で飯を作る。
「いらっしゃい。まあ、アンタもちっと座っていけよ。
時間はかかるが、その分、とびっきりの一品を仕込んでやるからさ」