あらすじ
「無理に仲良くしようとしなくていい。お飾りでいてくれれば構わない」
政略結婚で辺境伯ギルバートに嫁がされた伯爵令嬢イレーネ・クロヴィス。初日に告げられたその言葉は、実家で聞き慣れた「厄介者」という響きによく似ていた。
けれどイレーネには、誰にも明かしていない特技があった。幼い頃から独学で磨き続けてきた、宝飾品と骨董の鑑定眼だ。
「……恐れながら、これは贋作かと存じます」
屋敷の家宝の贋作を見抜いたその日から、イレーネは辺境伯領になくてはならない存在になっていく。
そして半年後——イレーネを厄介払いした実家が、贋作を高値で掴まされ、途方に暮れて助けを求めてきた相手こそ、他ならぬイレーネだった。
「今は仕事中ですので」
隠していた才能で、望まれなかった結婚を、居場所に変えていく話。