あらすじ
推しが同じ。それだけだったはずなのに。
高校二年生のこはると、一年生のナズナは、同じ作品が好きだった。
好きな曲の話をして、グッズを買って、イベントへ行く。
くだらないことで笑って、帰り道を一緒に歩く。
そういう時間が、こはるは好きだった。
だから、ナズナが別の誰かと楽しそうに話しているのを見たときも、最初は何とも思わなかった。
ただ、少しだけ、面白くなかった。
その「少し」が、なかなか消えてくれない。
友達だから。
先輩だから。
推し活仲間だから。
そうやって名前をつけてしまえば、きっと簡単なのに。
電車の窓に流れる街の明かりや、手のひらに残った小さな缶バッジみたいに、言葉にするほどではない気持ちだけが、いつまでもそこに残っている。
これは、誰かを「好き」だと認める少し前。
まだ名前のない気持ちを抱えている時間の話。