あらすじ
これは、ある家庭の話です。
仕事と家事と育児に追われながら、
それなりに忙しく、
それなりに穏やかな毎日を過ごしていた。
夫は、よく外に出るようになった。
やたらと前向きで、
「人の役に立つ仕事をしている」と話すようになった。
不安がなかったわけではない。
けれど、はっきりとした理由もなく、
問い詰めるほどの勇気もなかった。
収入は少しずつ曖昧になり、
家計は、静かに歪み始める。
それでも、
子どもたちは今日も笑っていて、
夕飯の時間はちゃんとやって来る。
マルチ商法。
その言葉を知ったとき、
すべてが壊れたわけではなかった。
ただ、
「もう前と同じではいられない」
と、気づいてしまっただけだった。
これは、誰かを責める物語ではない。
信じたことも、疑えなかったことも、
どちらも否定せずに進んでいく話だ。
家庭という小さな世界で、
主人公は、静かに選択を重ねていく。