あらすじ
図書館で働く澪は、地下の古文書倉庫でふと触れた一冊から、 江戸の長屋へと導かれるように“呼ばれる”ようになった。
そこは、工夫が息づく町。 水切り籠、干し棒、なぞり板、挟み留め―― 誰かの困りごとから生まれた知恵が、生活の中に静かに溶け込んでいる。
江戸での名は「おれい」。 長屋の人々は、澪の何気ない気づきや言葉に、 「ありがとう」と笑顔を向けてくれる。
現代では、図書館の新設コーナー 《江戸から続く工夫・現代に息づく》 を巡って、職員・管理会社・館長・市役所との静かな攻防戦が続く。
江戸の知恵を現代へ。 現代の知恵を江戸へ。 二つの時代を往復するうちに、澪は気づいていく。
――自分がこの時代に呼ばれたのは、偶然ではなく必然だと。
図書館と長屋。 活字と生活。 過去と現在が静かに重なり合う、 心に灯りがともる物語。