あらすじ
大学卒業後、社会福祉士・介護福祉士として熱心に障害者施設で働いていた水上(みずかみ)。彼は利用者のためを思い、いつか理想の施設を作るという夢を抱く「優秀な支援員」だった。
しかし、不慮の交通事故により脊髄を損傷。下半身完全麻痺となり、一生車椅子での生活を余儀なくされてしまう。
長いリハビリを経て、社会との接点を持つために通所施設『ひだまりの樹』へ通うことになった水上。だが、そこはかつて自分が立っていた「支援する側」の論理が支配する世界だった。
「初めまして!」という明るい声の裏で行われる初回アセスメント。
優しい声かけに隠された業務的な計算。
壁の予定表の意味、職員同士の隠語、そして「手のかからない利用者」を求める空気――。
福祉の「プロ」だったからこそ、支援される側になった途端、その残酷なシステムと裏側の心理が手に取るようにわかってしまう。知識があるゆえに奇跡を信じることすらできない彼は、誰からも警戒されない「穏やかな笑顔」を顔に貼り付ける。
これは、福祉業界の裏側を知り尽くした元・支援員が、シニカルな視点で施設のリアルを語りながら、絶望の淵から本当の意味で「自分の人生」を取り戻していくまでの再生の物語。