あらすじ
「お前は詫び状を書くしか能がない。もう要らぬ」
二十年連れ添った夫から三行半を渡されたとき、鶴(つる)はただ、思っていたより紙が軽い、と思った。
名家・八朔(はっさく)の家に嫁いでからずっと、鶴の仕事は詫びることだった。夫が伐った社の木。姑が踏んだ道祖神。義弟が笑って捨てた供物。人があやかしに与えた無礼を、鶴だけが数え、鶴だけが正しい作法で詫びてきた。誰も見ていなかったし、誰も覚えていなかった。
——鶴が屋敷を出た翌朝から、八朔の家には二十年ぶんの祟りが、古いものから順に帰りはじめる。
行くあてもなく歩いた鶴を拾ったのは、帝都の外れで朽ちかけた社に棲む、名も忘れられた古い神だった。人に祀られなくなって久しい彼は、詫びを受け取る相手がいないまま、静かに飢えていた。
「——お前は。私に、正しく頭を下げられるのか」
こうして鶴は、神様の妻として一年だけの契約を結ぶ。帝都に散らばった祟りを解いて回るために。そして、ようやく自分が頭を下げなくていい場所を見つけるために。
ただし、鶴に祟りを祓う力はない。彼女にできるのは、たったひとつだけ——。
※全30話・完結まで執筆済みです。毎日更新。ハッピーエンドです。