あらすじ
この物語は、男爵家のために五年間働き続けた夫人が、忘れていた商魂を取り戻し、自分の人生を選び直すまでのお話。
帝都の商家に生まれたルーシー・アン・ベレレス男爵夫人。
借金を抱えた男爵家へ嫁いで五年。
高利の借金を借り換え、支出を見直し、領地の胡桃や蜂蜜に新たな売り先を見つけ――彼女はついに、家の負債をすべて返し終えました。
けれど夫フランツは、妻の商才を喜ぶどころか、次第に疎むようになっていました。
そんな折、夫妻が出席した夜会で出会ったのは、自由気ままな「お騒がせ皇女」サージェッツァ。
皇女は、支援している若い陶工の花器を差し出し、ルーシー・アンへ尋ねます。
「これを帝都で売るなら、いくらをつける?」
品を見て、客を考え、値を考えて。
五年間押し込めてきた商人の感覚が、蘇っていく。
そしてルーシー・アンは、皇女を前に言い切りました。
「……その値では売れません」
忘れていた商魂が戻ったとき、彼女は初めて、自分自身のこれからを考え始めます。
記すのは、わたくし、ラトゥナ・ケートでございます。
本編前後編+皇女視点の後日談、全3話完結