あらすじ

兄が死んだ日、俺の中で、兄はもう一度生き始めた。

心臓と、左目として。

十五歳の夏。
双子の兄・彩陽は、事故で脳死となった。

世界最年少のプロサーファーだった兄が遺したのは、弟・蒼空へ移植された心臓と左目。そして、たった一行の言葉。

『心臓と左目は弟に。あいつ、俺のぶんまで生きるの下手だから』

それから三年。

雷鳴。墜落。掴めなかった手。銀の指輪――。

途切れた記憶を抱えた蒼空が目を覚ましたのは、真昼の空にも星が浮かぶ、異世界の浜だった。

黒からプラチナ色へ変わった髪。
深い海のような右目。
空のように淡い、兄から受け継いだ左目。

そして胸の奥では、死んだはずの兄の心臓が、何かを告げるように鳴っていた。

そこで蒼空は、黒髪に銀の筋を持つ少女・カイアと出会う。

初めて会ったはずなのに、なぜか懐かしい。
理由も分からないまま、二度と失いたくないと思った人。

だがカイアは記憶を奪われ、九つの錠に閉ざされた冥界へと消えてしまう。

彼女を取り戻すため、蒼空は神々と獣が息づく異世界を旅する。

その先で待つのは、失われた名前を封じる「空の棺」、星を喰らう影、四千年前に封じられた罪。

そして、蒼空に別人の名と役割を押しつけ、過去の誰かとして生かそうとする世界そのものだった。

けれど、蒼空は拒む。

兄の代わりにはならない。
過去の神にも、選ばれた英雄にもならない。

救いたい人がいる。

それでも、誰かを犠牲にする救いだけは選ばない。

これは、死んだ兄の人生を代わりに生きる物語ではない。

兄から受け取った命で、少年が自分の名前と生き方を選び直す物語。

「お前の左側は、俺が見る」

死者と交わした約束が、二つの世界の運命を動かし始める。

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アルファポリス
アルファポリス2026/08/01
  • 現在の作品死んだ兄の心臓は、異世界で鳴る