あらすじ
脳腫瘍の治療中に意識を失った、記憶力に優れた大学生。
次に目を覚ましたとき、彼は赤子になっていた。
名は――橘華(たちばな・ひかる)。
そこは、かつて日本と呼ばれた列島が六つの国家――極星国、東昇国、鳳国、九龍国、海陸国、大亀国――に分かれて覇を競う世界だった。
華が生まれた九龍国は、六国の中では小国ながら、強力な軍事力と高度に整備された統治制度によって急速に台頭し、西方の海陸国を屈服させた新興強国。
その頂点に君臨するのは、絶大な権力を握る皇帝・大和武尊。
そして宮廷では、関白・平岳、太政大臣・橘秀逸をはじめとする権力者たちが、それぞれの思惑を胸に動いていた。
そんな都から遠く離れた高野山で、華は育つ。
育ての親は、華が「オジィ」と呼ぶ説庵大僧正。
先帝の弟でありながら権力を捨てた、九龍国屈指の文化人にして伝説的な武人だった。
前の人生から残る膨大な記憶。
異常なほど高い記憶力と思考力。
そして説庵から叩き込まれた学問と武術。
華は非凡な少年へと成長していく。
しかし、華には自分自身について知らないことが多すぎた。
宮中で皇帝の近くに仕えていたという亡き母・橘優希。
一度も会ったことのない父。
自分が高野山へ預けられた理由。
そして母について尋ねるたび、口を閉ざす大人たち。
十三歳のある日。
高野山の古書庫で、華はこの時代には存在するはずのない文字を発見する。
そこに記されていたのは――。
「AI」
人工知能。
自分は本当に死んで、この世界へ生まれ変わったのか。
そもそも、この世界は本当に「過去」なのか。
十四歳になった華は、謎めいた仮面の護衛・五条とともに高野山を下りる。
やがて華は、華麗な宮廷の裏側に渦巻く巨大な権力闘争へ足を踏み入れていく。
冷酷無比と恐れられる関白・平岳。
その娘でありながら、なぜか田舎娘のように振る舞う平英姫。
母の過去を知る蔵人頭・源義弘。
華を値踏みする皇帝・大和武尊。
そして、華の存在そのものを危険視する皇帝の妹・雅山大公主。
母・優希は、いったい何を遺したのか。
そして――橘華とは何者なのか。
宮廷謀略、六国外交、戦乱、そして失われた文明の秘密。
死んで転生したと信じていた少年が、自らの出生に隠された真実と向き合い、六国の歴史を大きく変えていく。