あらすじ
近未来。
高度に発展したVR技術によって、現実と見分けがつかないほど精巧な仮想世界を体験できるようになり、VRMMORPGは世界中で人気を集めていた。
幼い頃から病弱で、長期入院を繰り返してきた十四歳の少女、天宮ソラ。
学校にはほとんど通えず、病室で通信学習を続けながら、窓の外に広がる空を眺める日々を送っていた。
ある日、ソラは病院で偶然、大手VRゲーム会社の代表取締役と出会う。
その出会いをきっかけに、ソラは世間で絶大な人気を誇るVRMMORPG『アルカディア・クロニクル』と、最新型のVR機器を贈られることになる。
ゲームを始めたソラが選んだ種族は、両腕が大きな翼になっている鳥人族、ハーピー。
その理由は、ただ一つ。
自分の翼で、大空を自由に飛びたかったから。
しかし、『アルカディア・クロニクル』は洞窟や地下迷宮、深い森などを探索し、モンスターを倒して成長していくゲームだった。
広い空では優れた飛行能力を持つハーピーも、狭い場所では翼を十分に広げることができず、満足に動くことすら難しい。
さらに両腕が翼になっているため、剣や弓などの武器を持つことができず、通常の鎧や盾も装備できない。
攻撃力も防御力も低く、探索できる場所も限られるハーピーは、プレイヤーたちから「ハズレ種族」と呼ばれていた。
けれど、ソラはそんな評価をまったく気にしなかった。
ダンジョンの攻略にも興味がない。
強い武器にも、珍しい防具にも興味がない。
レベル上げやランキングにも興味がない。
ソラはただ、空を飛びたかった。
町の上を飛び、山を越え、海を渡り、雲の中へ飛び込んでいく。
彼女のマイペースな行動は、少しずつ周囲のプレイヤーたちの目に留まり始める。
無口で人付き合いが苦手だったソラも、旅の途中で出会ったプレイヤーたちと、少しずつ交流するようになる。
これは、現実では病室の中だけで生きてきた少女が、仮想世界の空を自由に飛び、人々と出会い、自分だけの楽しみ方を見つけていく物語である。