あらすじ
八年、幼馴染の鞣した革に値をつけ、売り先を開いてきたわたしが「もうお前には頼らねえ」と切られ、言われたとおり付け値の札を置いて手を引いたら——あの人の革は、町の雪駄に挿げられなくなりました。
縋りも詰りもいたしません。八年ぶんの札を棚へ揃えて置き、自分の試し革片の箱だけを抱えて出るだけ。同じ鞣しでも、どの部位をどこへ売るかを知らなければ、値はつかないのです。
やがて町の革問屋がわたしの目を買い、わたしは自分の名で試し革片を切るようになります。去年の半値になった革を抱えて「また値をつけてくれ」と戻ってきた幼なじみへ、同じ一句を静かにお返しするお話。