あらすじ
町の庭師ロアンが、市場で一本の苗を買った。
それは、植えてから百年後にようやく花を咲かせるという「百年花」。
ロアンは五十六歳。
どう考えても、自分がその花を見ることはできない。
妻には呆れられ、町の人々には笑われた。
「百年後なんて、この国があるかも分からんぞ」
ロアン自身も、それを否定しなかった。
戦争が起きる。
町が焼ける。
食べ物がなくなる。
妻を失う。
自分も老いていく。
百年後どころか、明日のことさえ分からない。
それでもロアンは、水をやり続けた。
やがてその水やりは、一人の少女へ、その娘へ、孫へ、そしてロアンの名前すら知らない人々へと受け継がれていく。
誰に命じられたわけでもない。
立派な教えが残されたわけでもない。
ただ、昨日まで誰かが水をやっていたから、今日も誰かが水をやる。
そうして百年。
ついに、一輪の花が咲く。
これは世界を救う英雄の物語ではない。
百年後が来る保証なんてなくても、
それでも百年後が来るつもりで今日を生きた、一人の庭師と町の物語。