あらすじ
地方都市の繁華街から、少しだけ離れた場所。
酔客の笑い声も、ネオンの光も薄くなり始める通りに、一軒のシーシャ屋がある。
店の名前は、OMNIBUS。
そこにはヤクザも、警察も、詐欺師も、風俗嬢もやって来る。
人を救ってきた者も、人を騙してきた者も、自分を売って生きてきた者も、その扉をくぐれば等しく一人の客になる。
何者なのかは問われない。
何をしてきたのかも、煙を吸っている間だけは問われない。
客が選ぶのはフレーバー。
店が差し出すのは、一本のホース。
炭に火が入り、ボトルの水が音を立てれば、肩書きも、身分も、善悪さえも、白い煙の向こうへ薄れていく。
この店では、誰も裁かれない。
ただし、誰もが救われるとは限らない。
煙はいつか消える。
人間の抱えたものまでは、消してくれない。
これは一夜、OMNIBUSに乗り合わせた人間たちと、煙が消えたあとにも残ってしまった物語である。